小説の記録

ちょっとした感想の記録

春にして君を離れ

たまにはミステリー以外も。

結構前から購入していたもののあまり気が進まずようやく。

ほぼジョーンの思考や回想で話が進むのに、先が気になってすぐ読んでしまった。アガサクリスティの心理描写はやはりすごい。

タイトルを見てさわやかな物語と思いきや、最後まで読んでみるとじわじわと恐怖のようなものがくる。最初はロドニーが気の毒と思ったが、読み進めていくとジョーンとロドニーは似たもの同士なのでは、と。

自分の普段の言動も考えさせられる一冊でした。

悪魔の手毬唄

初めての横溝正史です。

たまたま鬼首村(おにこべむら)を訪れた金田一耕助は、手毬唄の歌詞通りに死体が異様な構図をとらされた殺人事件に遭遇した。二十年前にもこの村では殺人事件が起こったというが...。

二十年前の事件の話から入るが説明っぽく長文で書かれているわけではなく、磯部警部と金田一の会話で事件が語られていて読みやすい。

序盤はダラダラ感なくテンポが良いので話に引き込まれる。中盤はちょっとテンポが落ちた感じはあるが段々と色々わかっていくのはやっぱり面白い

登場人物が親子で出てきたり、屋号がでてきたりでややこしい。相関図がなかったので分かりづらく自分で書いた(笑)

あと、村の道や建物の位置関係が分かりづらいと感じた。

方言が読みづらくなかなか慣れなかった。

トリックのすごさを楽しむという感じではなく物語の雰囲気を楽しむという感じ。

金田一が最初から犯人の目星がついていたのに犠牲者がですぎ…(これはまあ、話の都合上しょうがないのかもしれないが)

目星がついてたならもう少し対策なりを講じるところがあってもよかったかなと。

残されたものの気持ちを考えると悲しくなった。

帽子収集狂事件

ジョン・ディクスン・カーを初めて読んでみました。

帽子が盗まれるという変わった事件が起こっていたが、みんな悪戯と思っていた。またある日、ビットンの帽子とビットンが発見したポーの未発表原稿が盗まれた。その後、帽子事件を追っていたビットンの甥のフィリップ・ドリスコルが何者かに殺害された。ドリスコルは盗まれたビットンの帽子が被せられていた。この二つの事件はどういう関わりがあるのか。フェル博士、ハドリーは事件の捜査に乗り出す。


舞台は霧のかかったロンドン塔で陰鬱な感じだが、登場するフェル博士が愉快な人で物語に重さを感じさせ過ぎないので丁度良い。

ロンドン塔の構造が少しわかりづらい。あと物語にあまり起伏がないように感じた。取り調べのやりとりは面白く読めたと思う。

終わり方は好き嫌いが分かれそう。私はえ?それでいいの?と思ってしまった笑

青銅の魔人

初!江戸川乱歩

江戸川乱歩エドガー・アラン・ポーからきているのを知ったのが最近な私です(笑)こうしてみるとかなりそのまんまですね。一番有名なのから読もうかと思いましたが行った本屋さんにあったやつにしました。

月夜の晩、銀座の街に現れたのは青銅の仮面をかぶり歯車の音をギリギリさせた不気味な人物。時計を次々盗むその人物が目をつけたのは手塚邸の「夜光の時計」だった。その盗みを食いとめるべく持ち主の手塚氏は名探偵・明智小五郎に助けを求めるが、時計は見事に奪われてしまう。助手の小林少年はチンピラ別動体なる組織を結成し怪盗を追い詰めるが、逆に囚われてしまう。小林少年はどうなるのか、華麗に盗み去った手口とは、そしてこの怪盗を捕まえることはできるのか......?


最初は文体に慣れませんでした。おそらく読みやすい文なのだとは思いますが今までの推理小説と文体がかけ離れすぎていて逆に読みづらく感じました。絵本を読み聞かせするときのゆっくりとした話し方で頭の中で再生される感じで不思議な気持ちで読みました(笑)どれから読んでも大丈夫と見かけましたが最初から読みたかったような気がします。


青銅の魔人のトリックはバレずにできるのか疑問です。犯人は分かりやすいですが、明智小五郎が登場して井戸の中へ入っていき種明かしするところやいつの間にか囚われた小林少年達が入れ替わっているところなどはワクワクしながら楽しく読めました。子どもも大人も楽しめる良い作品だと思います。他のシリーズも読んでみたいです。

サクッと面白い話が読みたいときに良い長さでした。

Xの悲劇

鋭敏な頭脳を持つ引退した名優であるドルリー・レーンが登場する四部作の一作目『Xの悲劇』を読みました。

ドルリー・レーンはニューヨークのブルーノ地方検事とサム警視から路面電車で起きた殺人事件への捜査協力を依頼されます。その殺人事件の凶器とは毒針をたくさん刺して作られたコルク球という今までにないものでした。殺害されたロングストリートの友人達が怪しいと捜査を進めるが、被害者に毒針を仕込むことができた人物は特定できず。そして次の殺人事件が起きてしまう。レーンは犯人Xを特定できるのか......。


ライツヴィルシリーズからエラリー・クイーンに入ったのでこれもやきもきさせられる展開かと思いきやそんなことはなく!

最初の殺人が行われてから犯人を特定できずにいたところ、犯人の情報を知っているという匿名の手紙がレーンのところに届きそこで二人目の被害者が出てしまいます。犯人に口封じされてしまったのか。ここからどんどん話が進んでいきあっという間に読んでしまいました。最後に殺されてしまったデヴィットが残したメッセージがなるほど!となりました。容疑者もたくさんいて誰が犯人か推理するのが難しいですが、ドルリー・レーンの活躍が見事に書かれていて納得の終わり方でした。これは『Yの悲劇』を読むのが楽しみですね。