小説の記録

ちょっとした感想の記録

死との約束

『ナイルに死す』がなかったので先に『死との約束』を読みました。アガサ・クリスティーはわりと最近読み始めましたが遂に10作目となりました!

 

この作品は、ポアロがある会話を聞いたところから始まります。その会話とは「いいかい。彼女を殺してしまわなきゃ…」という殺人をほのめかす内容でした。

 

登場するボイントン家は変わった家族です。母親が子供たちを精神的に縛り付けていて、子供たちは洗脳されているような状態のため常に母親の言いなりです。そこへホテルに泊まっている客たちとのやりとりなどが加わって話は進み、ある時自然死したと思われる遺体が発見されます。しかしよく見ると手首には注射痕、また医者の鞄のなかから薬が消えていることが分かります。ポアロはこれは殺人事件だと言い一人一人から話を聞くことにします。

 

複数人が嘘をついていて犯人が予想しづらく最後まで分かりませんでしたがポアロの説明を聞いて納得。話し方、その人の置かれていた状況をもっと想像しなくてはいけませんでした。意外性があり面白かったです。

姑獲鳥の夏

今回はミステリーでおすすめと聞いた『姑獲鳥の夏』を読んでみました。とりあえず序盤の印象に残ったところを載せておきます。あまり本筋とは関係ないところの感想ですが(笑)

 

久遠寺医院の娘の久遠寺梗子は二十ヶ月もの間身籠ったままだという噂がある。その夫である久遠寺牧郎は一年半前に密室から消え、失踪してしまったらしい。古本屋にして陰陽師京極堂中禅寺秋彦)がどう事件に関わって行くのか。話は友人の関口巽京極堂を訪ねるところから始まる。

 

最初の頁をめくると姑獲鳥について書かれていて一瞬読みづらそうと感じたましたが京極堂関口巽のやりとりが面白く、どんどん引き込まれて頁をめくる手が進みます。関口巽の疑問に答える京極堂の話が言い得て妙なのです。古本屋でのこの時間が、どう表現すれば良いのか、とにかく良い雰囲気というかなんというか。

話の序盤、京極堂が常識について語る文があります。ですがその前に、アインシュタインの「常識とは18歳までに身につけた先入観のコレクションである」という言葉を聞いたことがあると思いますが、これを聞いたときは確かにそうだなと思った記憶があります。しかし、ある程度の常識がないと世の中は回らないのでは?とも思ったので常識とは全てが先入観ではなく、半分くらいは共通認識でもあるのでは?と思いました。まあ、世の中を回すためだと思うのも先入観と言われたらおしまいですが……。

話に戻りますが、関口巽の「ー僕は確かに、君のいう通り陳腐な常識の範囲でしかものごとを捕らえることができないのだ。だからこうやって君のところに話を聴きにくるんじゃないか」との返答に京極堂は「〔前略〕常識だの文化だのを持っているってことは大切なことさ。ただそれは限られた範囲内でのみ有効なのであって、遍く凡てに応用できるなんて考えることが傲慢だといってるんだ」と言っています。結局のところアインシュタインと同じようなことを言っているように感じるかもしれないですが、京極堂の言葉には常識があることは大切だという前提があり、限られた範囲では有効だとも言っています。アインシュタインの言葉だと否定されたような気持ちになるのに京極堂の言葉だとスッと入ってきました。常識について語りたい訳ではないのですが京極堂関口巽のやり取りから自分も考えさせられるところが多くありなんとも言えない良さがあると思います。他にも紹介したいやり取りがありますがこの話が一番手短に紹介しやすそうだったのでこの話にしました。

ほかのやり取りが気になった方は、私の言葉で載せるのは難しそうな内容なのでぜひ読んでみてください。

全部を読んだ感想は、ミステリーとしては賛否が分かれそうな内容ではありました。語り手の目線で読むだけでは想像がつきません。通常だったらそんなことあり得るのかと思ってしまいそうですが、最初のやりとりが最後で生きてきてあり得ないと思うのになるほどと納得できます。京極堂関口巽の意識の話なんかは重要なやりとりだったと思います。結末としては悲しい結末ではありますが、嫌な気持ちにならなかったのは不思議です。シャーロック・ホームズアガサ・クリスティのようなミステリーとは違ってまた面白かったです。本は分厚めではありますが、まだこんなあるのかと途中で思うこともなくどんどん読んでしまう引き込まれる話でした。

十日間の不思議(新訳版)

第一作目『災厄の町』、第二作目『フォックス家の殺人』に続くエラリー・クイーンのライツヴィル・シリーズ第三作目となる『十日間の不思議』を読んだ感想です。

シリーズとはいえ続きの話ではないためバラバラに読んでも基本問題はありません。ですが、ところどころ前の話が登場する場面があるのでやはり順番に読むのがおすすめです。

 

私は「災厄の町」が置いていない本屋さんに遭遇することが多く未だに読むことができていないです……。ネットや本屋さんで取り寄せも考えましたが、本屋さんで実物を手に取って買うのが好きなのでまだ先になるかもしれません。

 

さて本題ですが、

今回はエラリイの旧友ハワードがたびたび記憶喪失に襲われ、その間自分が何をしているか見張っていてほしいという頼みを受けてライツヴィルに赴きます。しばらく事件という事件は起きずに時間が流れていくと思いきや、エラリイがハワードとサリーからある打ち明け話を聞いたところから事件は起きていきます。

果たしてエラリイはこの事件にどう臨んでいくのか……。

 

読んだ感想としては、

うーん、なんとも微妙な終わり方だと思いました。コナンが好きな人には共感してもらえるかもしれません。また、ハワードとサリーは読んでいてところどころイラっとしてしまうところもありました。

登場人物が少なく読みやすいですが、少ないがゆえに犯人の目星はつけやすかったかなと思います。しかし、全体としてはそんなところも含まれていたのかというような驚きもあって飽きることなく読めました。事件の真相は見事解決!というものではないので、スパッとした探偵の事件解決を読みたい方には向いていないかもしれません。

私としてはフォックス家の殺人の方が面白かったです。